以前、「お鍋一個洗うのに３ヶ月かかってしまった」
とある女性が言いました。彼女はその時、ずっと鬱の状態でした。ほとんど一人で家に引き籠っていました。心配した友達が、お鍋に料理を作って持って行ってあげました。
そういう時って、食べるだけでも大変なのです。しかし彼女は、元気になりたいと一生懸命に時間をかけてそれを食べました。そして、そのお鍋を洗って返そうと思いました。でも、心と身体がちゃんと動いてくれないのです…。そして３ヶ月かかってやっと１個のお鍋を洗って返せたのです。

「お鍋一個に３ヶ月？　そんなバカなっ」
と思う方もいるでしょう。
正直に言うと当時の私もそう思いました。「大変だなぁ」と同情はしましたが。

しかし、今、私はその当時の彼女の苦しさが、とてもよく分かります。なぜか？　その後、私も同じような状況を体験したからです。
そういう時って、確かにお鍋１個洗うにも３ヶ月かかってしまうのです。心と身体がうまく動かないのです。
鬱等で、心が弱っている人に対して「頑張ってという言葉は禁句」とよく言われますね。確かにそうなのですが、もっと言わせてもらうと、鬱等の問題を抱えている人ほど、実は誰よりも頑張っているのです。動くにくい心と身体を抱えて、他の誰よりも頑張って生きているのです…えらいのです。

たぶん、幸いにお元気な方には実際のところ理解できないお話かもしれません。でも、少しでも、そういうことを心の中に留めておいてもらえたら嬉しいです。